GISツールについて

前の投稿では、GISの概要や利用シーンをまとめました。
重ねての説明になりますが、GISは「地理的な情報、位置情報を管理・加工・可視化・分析・共有する技術」の総称で、特定のツールを示す言葉ではありません。
一方、世の中にはGISのうち多くの分野で使われる機能を集約してパケージ化した汎用型GISソフトウェアが存在します。狭義ではこのようなツール・ソフトウェアのことをGISと呼ぶことがあります。本記事ではこの「狭義な意味でのGISソフトウェア」について、簡単に触れたいと思います。

汎用GISソフトウェア(スタンドアロン型)

GISソフトウェアとしてよく使われるのが、PC上にソフトをダウンロードし「地理情報や位置情報を加工・可視化・分析するツール」としてのGISソフトウェアです。

有償ソフトウェア

1982年にEsri社より発売されたArcInfo(ARC / INFO)を皮切りに、当初は高価な分析ソフトウェアとして学術研究分野などで主に使用されていました。その後PCの普及や位置情報データが身近になるにつれて、多くのソフトウェアが世に販売されてきました。国内で有名な製品ですとArcGIS、MapInfo、SIS、地図太郎などです。これらは機能やサポート体制が充実しており、学術研究分野をはじめ、民間にも多くのユーザを抱えているツールとなります。

FOSS4G

さらに2000年代後半に入ると、GISの分野にOSS(オープンソースソフトウェアの略。商用ツールと違い世界中の有志技術者によって作られる、ソースコードの改変や再配布などが可能な無償ソフトウェアです。)の波が押し寄せます。今ではGISツールの代表格となったQGISも、2009年にリリースされたOSSです。

QGISは無償ながら機能も充実しています。一般の我々も気軽に使えますし、ネット上に情報も充実し、支援コミュニティも存在しているため、GISに触れるえで持って来いのソフトウェアです。本サイトでも今後多く取り上げることになるかと思います。

QGISをはじめとするGISに関するOSSのことをFOSS4G(Free Open Source Software for GeoSpatial)と総称します。本記事ではQGISのみを取り上げていますが、FOSS4G群にも多くの便利かつ高機能ソフトウェアが(もちろん無償の形で)存在するので、いずれそれらも取り上げていきたいです。

WebGIS

上で挙げたGISソフトウェアは、いずれもPCにソフトをダウンロードする形のソフトウェアです。一方で近年はWeb上で動くGISツールも増えてきました。より高度な分析はダウンロード型のツールの方がより充実している場合が多いですが、分析内容によってはWebGISでも十分なときがあります。

WebGISとして有名なツールには、例えば次のようなものがあります。

地理院地図

WebGISとして真っ先に取り上げたいのが地理院地図です。
名前の通り、日本の国土地理院が開発・提供するサービスです。
国土地理院は測量法に則り、国土を測り、その結果を地図として公開しています。その公開しているサイト(及び周辺サービスの総称)が地理院地図です。

単に最新の地図を公開しているだけでなく、過去地図や航空写真なども公開しており、それだけでも見ごたえがあります。加えて地図計測機能やマッピング機能なども充実しており「GISとは何か」を体感するうえで持って来いのツールかと思います。

※また地理院地図はオープンソースとも親和性が高く、なんと地理院地図のサイト構成はそのままGitHubで公開されていて、地理院地図をベースにWeb地図サービスを作ることもできちゃいます。

GoogleMaps

皆さんの生活に身近なGoogleMapsも、WebGISの代表格です。GoogleMapsでは単に地図を見るだけでなく、2地点間の距離計算や位置情報シェア、Googleマイマップの機能を使うことでお手持ちの位置情報データの可視化や共有もできます。GISを身近なサービスに落とし込んだという意味でGoogleMapsは物凄く画期的な存在です。

CARTO

ここからは一部有償のサービスです。CARTOは2011年に発表されたWebGISサービスです。Webサービスであることの強みを生かし、位置情報データの分析機能に加えてデータの可視化や共有機能が特徴的です。先に説明したFOOS4Gを多く用いて開発されており、一部無償利用枠もあるため、有償サービスでありながら比較的個人でも手が届くサービスといえそうです。

Mapbox

最近ソフトバンクグループが出資したことでも話題となったMapbox社のサービスです。Mapbox社は多くの地図技術を世に送り出しているので、本記事で扱う「狭義な意味でのGISツール」の枠で説明するか悩みましたが、WebGIS領域では無視できない存在のため触れたいと思います。

MapboxはSDKやAPI提供なども行っていますが、提供サービスの1つにMapboxStudioというサービスがあります。これは簡単に言うと、地図データを自分好みのデザインに加工したり手元のデータを組み合わせて可視化したり、またその結果を共有できるサービスです。高度な分析というよりは地図のデザインに寄ったサービスになりますが、地図が好きな方はきっと触って飽きないと思います!

さいごに

GIS分野の技術は日々進歩しており、特にWebGISの領域は年々新たなサービスが生み出されています。そのため本記事だけでは最新情報をキャッチアップしきれていないかと思います。また新しいツールや技術トレンドに出会ったら、都度本サイトで取り上げていきたいと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。

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