GIS分野の国際団体・業界規格について

GISデータについて調べていると”OGC標準”や”ISO規格”なる言葉を見かけました。他の分野でもそうであるように、GISの世界にも国際機関が存在し、様々な業界ルール・データ仕様を決めています。GISについて調べるうちにこれらの関係性が少し分かりにくくなってきたので、今回は少し硬めに、これらを整理してみたいと思います。

結論から先に書くと、業界・民間主導の団体であるOGCと、GISに限らずに経済全般で国際ルールを定めているISO(及びISOをもとに定められる日本国内ルール・JIS規格)の2系統があるようです。

OGC(Open Geospatial Consortium)

地理空間情報分野における業界最大の民間団体です。1994年に設立され、複数の民間GIS企業や一部の公的機関で構成されています。元々軍事技術であったGISは、1990年代に冷戦終結に伴い民間開放されるようになってきました。それまで主に米軍が有していた各種技術を「民間主導でも活用していこう」を目的として設立されたのがOGCです。

様々な企業が地理空間情報を活用しようとしたとき、各社が別々のルールで動き始めると業界内で収集がつかなくなり大変です。そのためOGCは、設立当初から様々な業界ルールを策定しています。後述するISOも同じ目的をもって活動していることから、OGC設立当初からISOとは協力関係にあるようです(OGCの取り組み成果の多くは、ISO側の議論にも反映されているようです)。

OGC参画団体

OGCは業界最大の民間コンソーシアムです。民間とはいうものの、政府機関や大学・研究機関も多く会員に名を連ねており、公的な性質を帯びている団体といえます。

参画団体は500以上あり、NASAやESAなどの公的機関、GoogleやEsriといったGIS業界を長くリードしている大企業、日本からは日立、アジア航測、国土地理院、三菱電機、パナソニック、RESTEC、中部大学などが参画しているようです(2021年1月現在)

参画団体の一覧はOGC公式サイトに掲載されています。
https://www.ogc.org/ogc/members

OGC標準

OGCは地理空間情報に関する様々な業界ルールを定め、管理しています。OGCの管理下にあるルールは一般にOGC標準と言われます。例えばOGC標準としては次のようなものがあります。

ベクトルデータ形式:GML、KML、Geopackage
ラスタデータ形式:GeoTiff
地図の配信形式:WMS、WMTS

OGC標準の一覧はOGC公式サイトに載っています。
https://www.ogc.org/standards/geopackage

なおOGC標準のうちのいくつかは、後述する国際機構・ISOによっても国際規格として認定されています。

ISO/TC211

国際標準化機構(ISO)は、あらゆる産業分野で国際規格を規定している国際団体です。日本からは日本産業標準調査会(経産省の審議会)が参加しおり、ISOで規定されたものは日本語訳されJIS規格として国内ルール化されます。

ISO/TC211はそんなISOの専門委員会の1つで、地理空間情報に関する国際規格を規定しています。1994年4月に発足しました。先述のOGCとは相互連携関係にあるようです。

ISO規格

ISO/TC211は、地理空間情報に関する規格の国際的な調整を行う作業委員会です。この委員会での調整結果、晴れて国際規格として認められたものはISO規格として発行されます。なお、ISOでは様々な産業分野で規定した国際規格1つ1つに数字で番号を振っています。地理空間情報に関するISO規格は、19…(19から始まる番号)が振られているようです。

またOGC標準とは連携関係にあり、例えばOGCが管理するデータ仕様をISOでも認定することもあります。すべてのOGC標準がこの流れを辿るわけではありませんが、例えばGMLはOGCが管理しISO側でも国際規格認定しているデータ仕様です。

JIS規格

JIS規格は、ISOで国際規格として認定された規格を、日本国内様に翻訳・ローカライズさせた規格です。地理空間情報分野においても、例えばGMLはJIS規格認定されたデータ仕様となっています。

まとめ

地理空間情報の分野では、OGCとISO(及びその国内版・JIS規格)の主に2つの業界ルールが存在することが分かりました。筆者の体感としては、GIS領域では特に前者の方が目にする機会が多いように感じます。GISソフトの商品説明サイトにも「OGC標準の○○フォーマットに対応!」などの文言を見る機会があります。一方で、後者はあまり一般に目にする機会は少ないと感じます(例えばGISデータとしてISO標準かつJIS規格認定されているGMLは、一時期は国のオープンデータサイトでもGML版データを公開していることがありましたが、最近はShapefileやgeojson,KMLを見かけることの方が多いように感じます)。