交通データフォーマット ~GTFS~

今回は公共交通に関するオープンデータのファイルフォーマットGTFSを扱います。

鉄道や飛行機は乗換検索アプリ等で表示されることが一般的ですが、身近な公共交通手段であるバスやシェアサイクル等は検索アプリ表示されないことが多いです。そのため土地勘のない場所だけでなく生活圏内であっても、これらの交通手段に気づかないことが多いです。実際には日本中にインフラが張り巡らされているため、ちゃんと検索アプリに表示されていれば生活の利便性が上がりそうです。

近年では、このような単距離公共交通サービスについて、データをしっかりオープン化して各種サービスに反映する動きが広がりつつあります。その背景には今回取り上げる公共交通に関する国際的なフォーマットが開発され、データ公開のハードルが下がったことが大きいようです。

今回は、その国際的な交通データフォーマットであるGTFSについて取り上げたいと思います。

国際的な公共交通データフォーマット

GTFS(General Transit Feed Specification)

GTFS(General Transit Feed Specification)は主にバスデータのオープンデータを行う際に用いられるファイルフォーマットです。バスのデータフォーマットとして普及しつつありますが、バスに限らず船舶情報など広く公共交通に拡張できるデータフォーマットになっています。ファイル形式はCSVファイルを集約したZIPファイルで、その記述方法・格納方法を定義したのがGTFSです。

2006年にGoogleを中心に「Google Transit Feed Specification」として策定され、2009年にはGoogleに限らず広く業界各社で使えるようにと現在の「General Transit Feed Specification」に改称されました。現在はMobilityDataという国際的な交通業界関係者有志のコミュニティによって仕様改定等が行われています。

GTFSでは主に次の情報を取り扱えるようになっています。

  • 運営事業者
  • モビリティ乗降場所(バスの場合はバス停、船舶の場合はフェリー乗り場)
  • 時刻表

GTFS-realtime

GTFS-realtimeは公共交通のリアルタイムの運行情報を公開するための国際的なデータフォーマットです。GTFSでは表現しきれないデータの標準化の需要が高まる中、Googleが開発しオープンソースとなっているProtocol Buffersをベースに策定されたのがGTFS-realtimeです。

GTFSと相互補完関係にあるデータフォーマットで、GTFSが静的な情報(モビリティ乗降場所や時刻表など)を扱うのに対して、GTFS-realtimeはリアルタイム性のある動的なの情報(現時点のサービス運行情報や車両のリアルタイム位置情報など)を扱います。補完関係にあるとはいえデータ形式は大きく異なります(GTFSは複数のCSVファイルを圧縮したZIPファイル、GTFS-realtimeはProtocol Butters)。

近年はGTFSと併せてGTFS-realtimeも同時にデータ公開する事例が増えつつあります。

日本国内でのローカライズ

標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP、GTFSリアルタイム)

標準的なバス情報フォーマットは、GTFS、GTFS-realtimeを日本国内のバス事業者用に改良(独自拡張)したフォーマットです。国交省の検討会で仕様策定が行われ、2017年にGTFSの日本ローカライズ版として静的バス情報フォーマット(GTFS-JP)が、2019年にGTFS-realtimeの日本ローカライズ版として動的バス情報フォーマット(GTFSリアルタイム)がそれぞれ公開されました。現在はこの2つを総称して「標準的なバス情報フォーマット」という名称で国を中心に普及活動が進められています。仕様書は下記で公開されています。

◆国土交通省 公共交通政策 ガイドライン 標準的なバス情報フォーマット
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000112.html

標準的なフェリー・旅客船航路情報フォーマット

標準的なフェリー・旅客船航路情報フォーマットは、標準的なバス情報フォーマットと同じように、国土交通省が日本国内のフェリー・旅客船事業者用に改良(独自拡張)したフォーマットです。2019年には公開されました。

◆国土交通省 海事 標準的なフェリー・旅客船舶路情報フォーマットhttps://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk3_000082.html

日本国内での普及状況

国交省が普及を後押ししていることもあり、近年国内でバスデータや航路のGTFSでのオープンデータ化が急速に進んでいます。国は上記のように率先して仕様のローカライズやガイドライン公開を行っており、さらに補助金等で事業者への作成支援も行っています。
加えてGTFSの普及が進むもう1つの背景は経路検索アプリなどのサービサーがGTFS対応を進めていることにあります。GoogleはGTFS策定当初から関与しており、公開されたGTFSデータをGoogleMapsの経路検索に反映する仕組みを用意しています。GTFS対応は他の検索サービスでも進み始めています。バス事業者視点で見るとデータ公開さえ自力で行えば、あとは様々なサービサーが自主的にデータを活用してくれる格好です。GTFSでのデータ公開は自分たちは追加の労力をかけずに自社交通サービスの認知度・利用者増に繋がるため、非常に魅力的な仕組みと言えます。2022年7月現在、日本国内の約500事業者がGTFSの整備・公開を行っています。

整備したGTFSデータは自社HPでサイトで公開するパターンもありますが、次のようなデータ公開に特化したサイトで公開している場合が多いです。

  • GTFSデータリポジトリ (運営:一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会(AIGID))
    https://gtfs-data.jp/
  • 公共交通オープンデータセンター(運営:公共交通オープンデータ協議会(ODPT))
    https://www.odpt.org/
  • 公共交通データHUBシステム(運営:ジョルダン株式会社)
    https://www.ptd-hs.jp/

このうち公共交通オープンデータセンターや公共交通データHUBシステムは事前の利用者登録が必要なのでご注意ください。試しに公共交通オープンデータセンターに申請してみたところ、一般個人であっても数日で簡単にアカウントを取得できました。個人でも交通データが身近に扱える素敵な時代になりました。まちづくりの視点でデータを眺め、分析するなど様々な活路が見出せそうです。

活用事例

GoogleMaps

GoogleMapsはGTFSが最も活用されているサービスの1つです。元々、GTFSの策定を主導したのがGoogleという経緯もあり、GTFSで公開されたバスや船舶情報などの多くがGoogleMapsに表示されています。2010年代中頃までGoogleMapsで経路検索をしたとき、鉄道・航空機・徒歩のみで案内されることが一般的でした。実際はバスに乗ればすぐの距離でも徒歩で案内される(もしくは鉄道を駆使した遠回りルートを案内される)ことが多く発生しました。現在はそのような苦しい思いをする機会が減ってきた背景には、GTFSが広まり、交通事業者各社がGTFSでのデータ公開の潮流に参加し始めた影響が大きいです。GoogleMapsへのGTFSデータの登録方法は公式サイトで確認できます。
◇Google乗換案内パートナー
https://support.google.com/transitpartners/

外出時に使うナビゲーションサービスとして利用者が多いことが主導して策定したフォーマットがの普通にあたって一番活用されている事例はやはり Google マップスですグーグルマップでは GPS のデータが公開されていた場合それをグーグルマップ上に反映させるという機能を窓口を用意しておりますこれによって近年ではナビゲーション経路検索を行う際にバスの情報が渋滞で出ていなかったバスの情報が反映されて光ナビゲーションされるようになってきました

GTFS Viewer

GTFS ViewerはGTFSデータの閲覧を目的としたWebツールです。 T.Shimada 様が開発されています。交通事業者が作成したGTFSデータのチェックを行うことを想定して公開されています。

https://tshimada291.sakura.ne.jp/transport/gtfs-viewer/

その筋屋

その筋屋はGTFSデータの自作ツールです。Sujiya Systems 様が開発されています。無償版も公開されていますが利用承諾が必要な場合もあるため、公式HPの記載をしっかり確認する必要があります。ツール講習会等も精力的に行われているのでTwitter(@Sujiya_System)も要チェックです。

http://www.sinjidai.com/sujiya/

QGISプラグイン GTFS-GO

GTFS-GOはGTFSデータをQGIS上で可視化するためのQGISプラグインです。QGISプラグイン開発でも有名な(株)MIERUNE社が開発し、オープンソースとして公開されています。GTFSデータをQGISに取り込めるようになることで、GIS上での分析ができるようになります。例えばバス停の所在地と周辺人口を掛け合わせた路線ごとのポテンシャル分析など、まちづくりの視点で個人でも様々な分析ができそうです。

https://github.com/MIERUNE/GTFS-GO

まとめ

公共交通データのオープン化は世界的に進みつつあり、その背景には実質的な業界標準規格のデータ形式・GTFSの存在があることを整理しました。特に旗振り役であるGoogleは、当初から仕様策定に関わっていたことや公開されたGTFSデータをGoogleMapsに反映する仕組みを用意しているなど、その普及に大きな役割を果たしています。

今後もGTFSの普及、公共交通情報のオープン化の流れが進むことを期待したいです。

一方で同じ交通サービスであっても、近年世界的に注目されインフラ整備が進んでいるマイクロモビリティ(シェアサイクル等)の情報はGTFSでは表現できません。時刻表という概念が存在しないなどサービス構造が大きく異なるためです。このようなマイクロモビリティサービスのデータ化はGBFS(General Bikeshare Feed Specification)と呼ばれるデータフォーマットで行われます。GBFSについては別記事で整理したいと思います。

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