交通データフォーマット ~GBFS~
前回に引き続き公共交通に関するオープンデータのファイルフォーマットを扱います。
前回はGTFS(General Transit Feed Specification)を扱い、国際的にバスや航路情報のオープン化が進んでいることを紹介しました。一方で近年世界的にインフラ整備が進むシェアサイクル等は、時刻表という概念が存在しないなどサービス構造が大きく異なるためGTFSでは情報を表現できないことも紹介しました。
シェアサイクルなどのモビリティサービスの領域では、GBFSと呼ばれるデータ形式が国際的に普及しつつあります。今回はGTFSに続いて注目されるGBFSを整理します。
目次
GBFS(General Bikeshare Feed Specification)はマイクロモビリティのオープンデータを行う際に用いられるファイルフォーマットです。名称にBikeshareの文字が入っていますが、シェアサイクルだけでなくシェアスクーターなどあらゆるマイクロモビリティサービスのデータフォーマットとして世界中で活用が広がっています。ファイル形式はjsonファイルの集合で、その記述方法・命名規則を定義したのがGBFSです。
2014年にMitch Vars様が原型を策定し、その後はNABSA(北米バイクシェア協会)にて仕様改定が進められ、現在はGTFS同様にMobilityDataという国際的な交通業界関係者有志のコミュニティによって仕様改定等が行われています。
GTFSでは主に次の情報を取り扱えるようになっています。
- 運営事業者情報
- モビリティ乗降場所(ステーションやモビリティ所在地)
- ステーションの現時点の貸出可能な台数・空き状況
日本国内での普及状況
日本国内でも海外同様にシェアモビリティサービスは注目されています。国内では2022年7月時点で、約200都市でシェアサイクルサービスが展開されているようです。例えば国内最大のシェアサイクルサービスHELLO CYCLINGは乗降拠点が全国に5,000ヵ所以上あり、異なる都市や運営会社間であっても相互乗り捨てができます。またHELLO CYCLINGに次いで大きいドコモ・バイクシェアは東京都内では赤チャリとして知られています。
2022年6月、国内で初めてシェアサイクルの国内大手2事業者(HELLO CYCLINGとドコモ・バイクシェア)がGBFSでオープンデータを公開しました(ただし後者は東京都内の乗降拠点のみに絞った限定的なオープン化)。日本のシェアサイクル市場の殆どはこの2サービスのため、この公開をもって「日本のシェアサイクルは殆どGBFSに対応した」とも言えそうです。バスや航路などのデータ規格であるGTFSと異なって国交省がGBFSの普及を積極的に後押ししている様子は見受けられません。シェアサイクルそのものが新しい交通サービスということもあり、業界として近年のオープンデータ化の潮流を受けて前向きに取り組んだ結果と考えられます。
両サービスともに公共交通オープンデータセンターでGBFSを公開しています。
https://www.odpt.org/2022/06/28/press20220628_bikeshare/
なお、GBFSはシェアサイクルに留まらずマイクロモビリティ全般に対応したファイルフォーマットです。マイクロモビリティに視野を広げるとHELLO MOBILITY(スクーター・カーシェア)やLUUP(キックボードシェア)などいくつかのサービスが存在するため、今後のそれらのサービスのGBFS対応の可能性にも注目したいです。
活用事例
国内大手2社がGBFSを公開したのは2022年6月です。執筆時点(2022年8月)ではまだGBFSを活用している事例はあまり見つけられませんでしたが、今後見つけ次第で加筆しようと思います。
東京都デジタルツイン3Dビューア
東京都が作成・公開する都市の3Dでの可視化を目指したサービスです。GTFSをもとに東京都内のシェアサイクル情報(所在地と自転車の貸出可能な台数情報)が3D地図上で確認できます。
https://3dview.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/
QGISプラグイン GBFS-NOW
GBFS-NOWはGBFSデータをQGIS上で可視化するためのQGISプラグインです。hiskoh氏が作成しGitHub上でオープンソースとして公開されています。GTFSにもGTFS-GOというQGISプラグインが存在するため、GTFSとGBFSを合わせてQGISに取り込むことで様々な交通分析・都市分析ができそうです。
https://github.com/hiskoh/GBFS-NOW
まとめ
GTFSやGBFSといった国際的な交通データフォーマットの登場により、国内においても公共交通データのオープン化が進みつつあります。今後もオープン化の潮流は止まらないとみられます。現在はオープン化されていないサービス・事業者もこれからデータ公開が行われる可能性があり、引き続き注目したいです。
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